合評者:蘭信三、高橋均、木村健二、川喜田敦子、権香淑、五十嵐泰正、李昌益ほか
趣旨:
近年、移民や難民、強制移住、引揚げなどの人の移動をテーマとする研究が活性化している。関心の高まりには様々な要因があるだろうが、そこには、20世紀末以降の日本社会の外国人人口の増加という変化とかつての植民地支配の歴史に関わる問題提起が続いていることが影響しているだろう。
このたび刊行される、蘭信三編著『帝国以後の人の移動』(勉誠出版)は、そうしたグローバリゼーションのなかの人の移動の活性化とポストコロニアリズムに関わる現代的問題関心をふまえた論考が並ぶ大部の著書となった。20世紀初頭の日本帝国拡張のもとでの人口移動の特徴を押さえた上で、20世紀半ばの引揚げから21世紀の現在までの時期を扱い、日本とその近隣地域を中心としつつもそこにとどまらない多様な地域・民族の事例を多様な方法で分析した論考が収められている同書は、人口移動研究の可能性や今後の課題について考える素材を与えてくれるであろう。
そこで、同書の刊行を受けて蘭信三上智大教授をはじめとする執筆者をお招きし、海外の研究者を含む日本近現代史、ドイツ史、日本アジア関係史、社会学等の研究者とともに同書の合評会の場を設けた。議論を深めていくために、人口移動に関心を持つ研究者、引揚げや移住等の経験者・そのご家族等をはじめとする多くの方の参加を呼びかけます。
主催:科研基盤B「移民とその故郷:非同化適応戦略とトランスナショナリズム表象」(代表・高橋均)
後援:東京大学総合文化研究科アメリカ太平洋地域研究センター/グローバル地域研究機構